虫歯や歯周病、事故や外傷など、歯を失ってしまうリスクは日常に潜んでいます。それがたった一本だけだったとしても、その影響は食事をする際、話す時、または微笑む際まで、日常生活のあらゆる瞬間にわたって及んでしまいます。歯を失ったことによる影響は、表面的には美容的な問題だけであると思われがちですが、実は健康上の決して小さくない問題も引き起こす可能性があるのです。この記事では、歯を失った際のリスクとそれを取り戻す方法について詳しくご説明します。
目次
歯を失った状態を放置するリスク
歯を失うと、その後に数多くのリスクが付随します。そのため、歯を取り戻すことは、ただ美しい笑顔を取り戻すだけでなく、口腔の健康と全身の健康を維持するためにも重要なステップとなります。具体的なリスクについて詳しくお伝えします。
まず第一に、歯がない状態が続くと、歯茎と顎骨が徐々に萎縮し始めます。歯がない部分の顎骨は使用されず、その結果、骨の量が減少し、顔の形が変わることがあります。これは、骨が歯を支える役割を果たしているためです。歯が失われると、その部分の骨は機能を果たさなくなり、時間と共に消失してしまいます。
さらに、食事の咀嚼が難しくなるため、栄養バランスが崩れる可能性もあります。歯がない部分で硬い食物を咀嚼することができなくなると、食事の選択肢が制限され、結果的に栄養素の摂取に偏りが生じることがあります。
さらに、歯がない箇所を補うべく隣接する健康な歯が移動し始めることもあります。これにより噛み合わせが悪くなり、さらなる口腔の問題を引き起こす可能性があります。歯が失われた部分が空洞となっていると、周囲の歯がそのスペースに移動しようとする傾向があります。そうなると、健康な歯に不必要な負担をかけることになります。
失った歯を補う方法(選択肢)
歯を失った場合、それを取り戻すための数々の選択肢があります。それぞれの選択肢には、それぞれのメリットとデメリットがあります。以下に、その選択肢をいくつか紹介します。
ブリッジ
ブリッジは、失った歯を補うために、周囲の歯を支えにして人工の歯を固定する方法です。ブリッジの利点は、安定性と自然な見た目です。ただし、ブリッジを設置するには、周囲の健康な歯を削る必要があります。そのため、健康なはずだった歯が将来的に問題を抱える可能性がある点がデメリットです。
入れ歯
歯を失った場合の代表的な置き換え方法が入れ歯です。入れ歯は取り外しが可能でかつ洗いやすいというメリットがありますが、適切なフィット感を得るためには定期的な調整が必要となるほか、入れ歯の素材などにもよるものの噛む力が弱くなったり不自然に見えやすいというデメリットもあります。
インプラント
インプラントは、失われた歯の根を人工的に置き換える方法です。インプラントは顎骨に直接埋め込まれ、その上に人工の歯が取り付けられます。この方法は自然な見た目と機能を提供しますが、治療期間が長く、一般的に費用も一番高い選択肢となります。
インプラント治療のリスクおよび注意点
・1~2週間程度の術部の痛みと腫れ(最も症状が強いのは2~3日目)
・1週間程度の開口障害
・1週間程度の摂食嚥下障害
・出血(まれに術部相当部の皮下出血班)
・口角炎
・術後感染
・治癒不全
・口腔内術部の創痕
・インプラントと骨との結合不全
・下唇のしびれ(下あごの奥歯にインプラントを入れた場合)などの神経障害
※当院では精密なシミュレーションガイドを使用しているため、神経本幹を直接障害することはありません。しかしながら、稀に細い神経枝があり神経障害を避けられない場合がございます。
・上顎洞炎(上あごの奥歯にインプラントを入れた場合)などの術後感染
※縫った傷口から移植した骨やインプラント体が細菌等に感染し、発赤や発熱、痛みなどの症状が出ます。上顎洞に生じた場合には、鼻汁や鼻閉等が生じ、蓄膿症になる場合がございます。
これらの選択肢は一長一短があります。そのため、歯科医師と相談し、個々の状況に最適な解決策を見つけることが重要です。
いずれの方法を選ぶにせよ、失った歯を放置するということは健康面から見ておすすめできません。ぜひ早い段階で、歯科医院で相談されることをおすすめします。